ARPスプーフィング攻撃とは
ARPスプーフィング攻撃は、攻撃者がネットワーク内の他のデバイスに対して偽のARPメッセージを送信し、自分をネットワーク上の他のデバイス(多くの場合はゲートウェイ)として装うことにより、ユーザーのデータトラフィックを傍受する攻撃です。この攻撃により、攻撃者は中間者攻撃(Man-In-The-Middle, MITM)を実行し、通信を監視したり、改ざんしたりすることが可能になります。
攻撃のプロセス
- 通常のARP動作:
- デバイスはネットワーク上の他のデバイスのMACアドレスを知るためにARP要求をブロードキャストします。
- 要求を受信したデバイスは、自分のMACアドレスを含むARP応答を返します。
- ARPスプーフィング攻撃:
- 攻撃者はネットワーク上で偽のARP応答をブロードキャストし、自分のMACアドレスをターゲットデバイスのIPアドレスに関連付けます。
ARPテーブルの変化を示す図解
攻撃前
-
ユーザーのデバイスARPテーブル:
IPアドレス MACアドレス ゲートウェイのIP ゲートウェイのMACアドレス -
攻撃者のデバイスARPテーブル:
IPアドレス MACアドレス ユーザーのIP ユーザーのMACアドレス
攻撃後
-
ユーザーのデバイスARPテーブル:
IPアドレス MACアドレス ゲートウェイのIP 攻撃者のMACアドレス -
攻撃者のデバイスARPテーブル:
IPアドレス MACアドレス ゲートウェイのIP ゲートウェイのMACアドレス ユーザーのIP ユーザーのMACアドレス
このように、ARPスプーフィング攻撃により、攻撃者はユーザーのデバイスとゲートウェイの間に自分を挿入し、すべてのトラフィックを傍受することができます。これにより、攻撃者は機密情報を盗み出したり、通信内容を改ざんしたりすることが可能になります。
sequenceDiagram
participant A as ユーザーのデバイス
participant G as ゲートウェイ
participant H as 攻撃者
A->>G: インターネットへの正規通信要求
G-->>A: インターネットからの応答
Note over A,H: 攻撃者はこの段階でユーザーの通信を傍受する準備をします。
H->>A: 偽のARP応答(攻撃者のMACアドレスをゲートウェイのIPに紐付け)
H->>G: 偽のARP応答(攻撃者のMACアドレスをユーザーのIPに紐付け)
Note over A,G: これにより、AとGは攻撃者を経由して通信するようになります。
A->>H: インターネットへの通信要求(攻撃者経由)
H->>G: インターネットへの通信要求
G-->>H: インターネットからの応答
H-->>A: インターネットからの応答(攻撃者が傍受)
ARPスプーフィング攻撃に対する対策
ARPスプーフィング攻撃を防ぐためには、ネットワークのセキュリティを強化し、不正なARPトラフィックを検出できるようにする必要があります。以下に、効果的な対策をいくつか紹介します。
静的ARPエントリの設定
- ネットワーク内の重要なデバイス(例えば、ゲートウェイ、サーバー)に対して、ARPテーブルに静的にIPアドレスとMACアドレスを割り当てます。
- これにより、攻撃者が偽のARP応答でこれらのデバイスを偽装することを防ぐことができます。
ARPスヌーピングの有効化
- スイッチやルーターでARPスヌーピング機能を有効にすることで、不正なARPパケットを検出し、ブロックすることができます。
- ARPスヌーピングは、信頼できるポートからのみARP応答を許可し、不正なソースからのARPトラフィックを制限します。
ネットワークセグメンテーション
- ネットワークを複数のセグメントに分割することで、攻撃の影響範囲を限定し、セキュリティを向上させることができます。
- セグメンテーションにより、攻撃者がネットワーク全体にアクセスするのを難しくします。
VPNの使用
- ネットワークトラフィックを暗号化することで、ARPスプーフィングによる傍受を防ぐことができます。
- VPNは、特に公共のWi-Fiネットワークなど、セキュリティが低い環境での通信において有効です。
セキュリティソフトウェアの使用
- ARPスプーフィング攻撃を検出し、警告するセキュリティソフトウェアやシステムを導入します。
- これらのツールは、不審なARPアクティビティを監視し、攻撃を早期に発見するのに役立ちます。
これらの対策を適切に実施することで、ARPスプーフィング攻撃に対するリスクを大幅に低減させることができます。しかし、ネットワークのセキュリティを維持するためには、これらの対策を定期的に見直し、更新することが重要です。