ネットワークスペシャリスト ARP Spoofing

ARPスプーフィング攻撃とは

ARPスプーフィング攻撃は、攻撃者がネットワーク内の他のデバイスに対して偽のARPメッセージを送信し、自分をネットワーク上の他のデバイス(多くの場合はゲートウェイ)として装うことにより、ユーザーのデータトラフィックを傍受する攻撃です。この攻撃により、攻撃者は中間者攻撃(Man-In-The-Middle, MITM)を実行し、通信を監視したり、改ざんしたりすることが可能になります。

攻撃のプロセス

  1. 通常のARP動作:
    • デバイスはネットワーク上の他のデバイスのMACアドレスを知るためにARP要求をブロードキャストします。
    • 要求を受信したデバイスは、自分のMACアドレスを含むARP応答を返します。
  2. ARPスプーフィング攻撃:
    • 攻撃者はネットワーク上で偽のARP応答をブロードキャストし、自分のMACアドレスをターゲットデバイスのIPアドレスに関連付けます。

ARPテーブルの変化を示す図解

攻撃前

  • ユーザーのデバイスARPテーブル: | IPアドレス | MACアドレス | |———–|——————| | ゲートウェイのIP | ゲートウェイのMACアドレス |

  • 攻撃者のデバイスARPテーブル: | IPアドレス | MACアドレス | |———–|—————| | ユーザーのIP | ユーザーのMACアドレス |

攻撃後

  • ユーザーのデバイスARPテーブル: | IPアドレス | MACアドレス | |———–|—————–| | ゲートウェイのIP | 攻撃者のMACアドレス |

  • 攻撃者のデバイスARPテーブル: | IPアドレス | MACアドレス | |———–|——————| | ゲートウェイのIP | ゲートウェイのMACアドレス | | ユーザーのIP | ユーザーのMACアドレス |

このように、ARPスプーフィング攻撃により、攻撃者はユーザーのデバイスとゲートウェイの間に自分を挿入し、すべてのトラフィックを傍受することができます。これにより、攻撃者は機密情報を盗み出したり、通信内容を改ざんしたりすることが可能になります。

sequenceDiagram
    participant A as ユーザーのデバイス
    participant G as ゲートウェイ
    participant H as 攻撃者
    A->>G: インターネットへの正規通信要求
    G-->>A: インターネットからの応答
    Note over A,H: 攻撃者はこの段階でユーザーの通信を傍受する準備をします。
    H->>A: 偽のARP応答(攻撃者のMACアドレスをゲートウェイのIPに紐付け)
    H->>G: 偽のARP応答(攻撃者のMACアドレスをユーザーのIPに紐付け)
    Note over A,G: これにより、AとGは攻撃者を経由して通信するようになります。
    A->>H: インターネットへの通信要求(攻撃者経由)
    H->>G: インターネットへの通信要求
    G-->>H: インターネットからの応答
    H-->>A: インターネットからの応答(攻撃者が傍受)

ARPスプーフィング攻撃に対する対策

ARPスプーフィング攻撃を防ぐためには、ネットワークのセキュリティを強化し、不正なARPトラフィックを検出できるようにする必要があります。以下に、効果的な対策をいくつか紹介します。

静的ARPエントリの設定

  • ネットワーク内の重要なデバイス(例えば、ゲートウェイ、サーバー)に対して、ARPテーブルに静的にIPアドレスとMACアドレスを割り当てます。
  • これにより、攻撃者が偽のARP応答でこれらのデバイスを偽装することを防ぐことができます。

ARPスヌーピングの有効化

  • スイッチやルーターでARPスヌーピング機能を有効にすることで、不正なARPパケットを検出し、ブロックすることができます。
  • ARPスヌーピングは、信頼できるポートからのみARP応答を許可し、不正なソースからのARPトラフィックを制限します。

ネットワークセグメンテーション

  • ネットワークを複数のセグメントに分割することで、攻撃の影響範囲を限定し、セキュリティを向上させることができます。
  • セグメンテーションにより、攻撃者がネットワーク全体にアクセスするのを難しくします。

VPNの使用

  • ネットワークトラフィックを暗号化することで、ARPスプーフィングによる傍受を防ぐことができます。
  • VPNは、特に公共のWi-Fiネットワークなど、セキュリティが低い環境での通信において有効です。

セキュリティソフトウェアの使用

  • ARPスプーフィング攻撃を検出し、警告するセキュリティソフトウェアやシステムを導入します。
  • これらのツールは、不審なARPアクティビティを監視し、攻撃を早期に発見するのに役立ちます。

これらの対策を適切に実施することで、ARPスプーフィング攻撃に対するリスクを大幅に低減させることができます。しかし、ネットワークのセキュリティを維持するためには、これらの対策を定期的に見直し、更新することが重要です。

参考サイト

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